【映画】ショーシャンクの空に/時代を越えて愛される世界最高峰の映画を振り返る
評価:☆4.9
映画のレビューサイトは、日本に限らず海外でも無数にある。
その中で、「歴代No,1の映画は何か?」という議題が出たら、ほぼ間違いなく最有力候補として挙がるのがこの映画。オススメを他人に聞かれたら、取り敢えずこの映画を出しとけば間違いない。
観たこと無い人、
死ぬ前に1回観よう。
DIRECTOR |
Frank Darabont |
---|---|
CAST |
Tim Robbins |
脚本 |
Frank Darabont |
原作 |
Stephen Edwin King |
公開日 |
米国1994年9月10日 |
上映時間 |
142分 |
製作国 |
米国 |
9.3 |
スティーヴン・キングの中編小説「刑務所のリタ・ヘイワース」を原作に制作されたアメリカ合衆国の映画。公開当時は興行的に失敗に終わったが、その後じわじわと評価を伸ばし、現在では映画史に残る傑作として世界中から人気を博している。
1. ストーリー
※画像は全て映画「ショーシャンクの空に」から引用。
銀行の副頭取だったアンドリュー・デュフレーン(以下アンディ)は、妻とその愛人を射殺した罪に問われていた。
アンディは無実を主張したが、状況証拠が揃っており、アンディ自身も酒に酔っていたことが災いした。細部の記憶が曖昧だったアンディは、裁判長から終身刑を言い渡され、ショーシャンク刑務所へ服役することになる。
場面は変わり、そこではエリス・ボイド・レディング(レッド)が仮釈放の審査を受けていた。
しかし却下される。
作中でレッドが仮釈放の審査を受けるシーンは計3回あるが、その全てでレッドは異なる心情を抱いている。今回はその1回目。
「今は真人間です」と主張するも、目線は常に揺れ動いており、落ち着きがない。声のトーンも通常より高めで、媚びへつらっているように聞こえる。
そして、仮釈放が却下された後、レッドは自分を閉じ込める塀を見上げる。その表情に、しかし落胆の色は無い。
一見、自分の境遇を自虐しているようにも見えるが、実は違う。ここは重要な伏線。説明は後ほど。
そしてカメラは、ショーシャンク刑務所の全体像を映し出す。
新たに入所する受刑者たちの周囲に、大勢の囚人たちが集まってくる。
悪徳所長と鬼の主任刑務官。
「最初の夜が一番辛い」
レッドの独白が響く。ホースの水で家畜の様に洗われ、粉の洗剤を直接浴びせられ、素っ裸のまま歩かされる。新しい受刑者を、劣悪な待遇が出迎える。
そんな中で、新たな受刑者の一人が「出してくれ」と取り乱してしまう。
彼はハドリー主任刑務官から、刑罰という名の過剰暴行を受けてしまう。
レッドの感情の無い目が、彼のこれまでの日々を物語る。
食事は、何かの虫が混じっているほど質が悪い。
昨晩暴行を受けた新人受刑者は、満足な治療ができず、そのまま死んでしまったという。
アンディが「彼の名前は?」と問うと、
「知ってどうする。奴はもう死んだんだ」とドライな返答。
アンディは刑務所に馴染めずにいた。
そんなアンディは、ひと月経ってようやくレッドとまともな会話をする。
無実を主張するアンディと、それを茶化すレッド。
ショーシャンク刑務所で、レッドは「調達屋」として知られていた。あらゆるものを外から調達する術を知り、「タバコやマリファナ、祝いの酒も調達できる」と語る。
そんなレッドに、アンディが依頼したのは「ロックハンマー」と呼ばれる小型のツルハシだった。用途を問うと、「趣味を復活させるため」と答える。アンディは地質学に通じており、鉱石採集が好んでいた。
レッドはアンディに好感を抱く。
レッドが「ここの連中とは物腰が違う」と語る様に、アンディは自分だけの世界を持っていた。
レッドは、刑務所内では貴重な嗜好品であるタバコを「通貨」のように使いながら、刑務官や他の受刑者を抱き込み、アンディが頼んだロックハンマーを「調達」する。
そんな中、アンディを狙う人物が現れる。
ボグズは、狙った相手を力づくで犯すことに快感を覚える、レッドをして「人間のクズ」と言わしめる人物だった。
性行為を強要するボグズ達に抵抗し、アンディは生傷の絶えない生活が続く。
アンディが身も心も病んでいた時のこと。
所長が刑務所の屋根を修理することを決める。12人の志願者を募った。5月の屋外作業は気持ちが良いとのことで、大勢の受刑者が志願した。
レッドは刑務官をタバコで買収し、仲間達と共に12人の内に選ばれる。
その作業中、アンディはハドリーの遺産相続に関する税金問題を耳にする。
元々銀行の副頭取だったアンディは、お金に関する知識に秀でていた。
遺産を相続するのではなく、妻に「寄付」という形を取れば、6万ドルまで非課税となる。
解決案を提示し、ハドリーのために力を貸すと約束するアンディ。見返りに要求したのは、仲間達にビールを振る舞うことだった。
レッドはこれを「春の珍事」と表現した。
既に酒を絶っていたアンディが、何故仲間たちのためにビールを要求したのか。レッドは「安らぎを求めたんだろう」と語っている。ここのシーンはしばしばキリストの「最後の晩餐」を模していると評される。
アンディとレッドはお互いに大切な友人となっていった。次第に、レッドの中にとある疑問が芽生え始める。
果たして本当にアンディは罪を犯したのか?
レッドの問いに、いつかの言葉を返すアンディ。
アンディが同じ質問を投げかけると、レッドも「殺人」の罪で服役している言う。
「俺だけは有罪さ」
これは、レッドの重要な台詞のひとつ。そして、アンディとの対比でもある。
場面は変わり、レッドたちが作中で映画を観ているシーン。
湧く一同。
このとき、アンディがレッドに話しかけたのは、とあるものを「調達」して貰うためだった。
まさかの注文に、レッドが思わず振り返る。
しかし、「時間がかかる」と言いながらも、レッドは必ず調達することを約束する。
その帰り道、またもやあの男がアンディを襲う。
アンディはボグズたちに半殺しにされ、ひと月診療所へ。ボグズは懲罰房へ入れられた。
意気揚々と懲罰房から帰ってきたボグズを待ち受けていたのは……
ハドリー主任刑務官による過剰暴行。
ボグズは生涯流動食しか食べられない身体になり、他の施設に移されることになった。
レッドたちは鉱石を集め、頼まれていた品を調達し、診療所から戻ってきたアンディを温かく迎えた。
一難去ってまた一難。
無事に切り抜けるアンディ。
しかし、この抜き打ち検査には別の目的があった。
アンディに新しく与えられたのは図書係の仕事。老囚人ブルックスの助手として働くことになる。
直後、ひとりの刑務官がアンディを訪ねた。
アンディを図書係にした真の狙いは、彼を刑務官の経理担当者として働かせるためだった。
これを機に、アンディは図書係として、刑務所の本を増やして貰うよう州議会に手紙を書くようになる。また、刑務官たちの所得申請も請け負うようになる。
事務員(レッド)も手伝う程の人気ぶり。
そんな折、なんと老囚人のブルックスが事件を起こす。
ブルックスが取り乱した理由。それは仮釈放が決まったからだった。本来囚人たちが望んでいるはずの仮釈放。それを、ブルックスは何故拒んだのか。
レッドの言葉に「出任せを言うな」と反論する仲間たち。
さらにレッドは続ける。
これは、実はレッド自身のことでもあった。
レッドは既に受刑者として長年服役している。冒頭で仮釈放を却下されたとき、レッドは思わずほっとした表情で塀を見上げた。あのシーンは、実はレッドは仮釈放を望んでいないという伏線だった。
ブルックスの新しい生活が始まる。
「私などが死んでも迷惑はかからんだろう」と綴る。
レッドたちはブルックスの最期を手紙で知る。
一方で、刑務所に新たな変化も訪れた。
週に一通手紙を書き続けていたアンディ。
なんと州議会が根負けしたのだ。
僅かばかりではあるが予算が割り当てられ、中古図書が寄贈された。「もう手紙は不要」との返事に、「今度からは週に二通書こう」と言って笑う。
さらに、アンディは送られてきた荷物の中に『フィガロの結婚』のレコードを見つける。
アンディは音楽を所内放送で流す。
受刑者たちが手を止める。
寝ていた者は身体を起こし、美しい音色に身を委ねる。
刑務所に流れる美しい音色。
所長たちは「音楽を止めろ」と怒鳴る。
それを聞いたアンディは……
忠告に従うどころか、逆に音量を上げる。
ここでは、美しい音色に見向きもしないノートン所長とハドレー主任が描かれている。もう既に、彼らは心の豊かさを失っているという暗示かもしれない。
懲罰房から帰ってきたアンディは、仲間たちから「音楽屋」と持て囃される。
希望を語るアンディ。
対して、レッドが口にしたのは逆のことだった。
そして場面は、レッドの二回目の仮釈放のシーンへ。
発言後、レッドの視線は下を向く。
何とか言いつくろって表情を作るが、やはり真っ直ぐ前を向けない。
最終的に目線を上げて言葉を発することすらできなくなってしまう。
結果はやはり「仮釈放不可」
「残念賞」として、アンディはこっそりハーモニカを用意していた。その場では吹かず、レッドは夜中に独房の中で微かに音を鳴らす。
ここでのハーモニカ、つまり音楽は、「希望」の暗喩になっている。アンディの語る希望を「危険なもの」と話したレッドには、この音色を受け入れる勇気がまだない。
1963年、宣言通り週に二通の手紙を州議会宛に書き続けていたアンディは、ついに年度毎の予算まで獲得していた。
アンディは予算をフルに生かし、格安本や売れ残りの本を買い集め、ついに立派な図書館を作り上げた。
この年、ノートン刑務所長が新たな事業に着手していた。
この「青空奉仕計画」は、表向きは囚人たちを社会福祉に貢献させるものだったが、本来の目的はピンハネだった。
不正取引の裏で、アンディが会計を務めていた。
所長の裏金が膨れ上がっていく。
「賄賂のコレクター」と揶揄する。
レッドは「バレたらやつも我々の仲間入りだ」と語るが、アンディ曰く「捕まることは無い」と言う。アンディは架空の人物を創り出し、その人物に黒幕を担わせていた。
これにはレッドもびっくり。
そして、ショーシャンク刑務所に、新たな受刑者が入所してくる。
トミーという青年は、コソ泥だが元気で明るく、憎めない男として気に入られていった。
一方で妻子持ちであり、きちんと更生したいという想いも抱いていた。そんな中、アンディが図書室で囚人に高卒の資格を取らせているという話を耳にする。
やがてトミーは勉強の面白さを知り、アンディは高校の教科を教え始める。
しかし……
試験の手ごたえは、トミーにとって芳しくなかった。今までの努力と時間が無駄だったと感じたトミーは癇癪を起し、解答用紙をゴミ箱に叩き付ける。
落ち込むトミーと、それを励ますレッド。
トミーは、何故アンディが服役しているのか理解できず理由を尋ねる。レッドは、アンディの罪状は「殺人」だと答えた。
すると、トミーの表情が曇る。あちこちの刑務所を転々としていたトミーは、とある話を耳にしていた。
アンディの目が見開かれる。レッドの疑念が確信に変わる。やはりアンディは無実だった。
ここの演出として、視聴者もレッドと同じ気持ちを抱くようになっている。実は作中で、アンディが本当に無実かどうかは描かれていない。我々視聴者目線からも、アンディはあくまで「白に近いグレー」の存在だった。ここのトミーの話で、ようやくアンディが冤罪であることが明らかになる。
しかし、所長は認めない。
所長からすれば、優秀な経理担当であり、さらに裏金の存在まで知っているアンディを、今更「冤罪でした」と釈放するわけがない。
焦るアンディ。前代未聞の1か月の懲罰防行きを命じられ、身動きが取れなくなってしまう。
アンディが冤罪という話は、仲間内に知れ渡っていた。「俺のせいだ」と自分を責めるトミーを、レッドは否定する。
そして、ついにトミーの試験結果が返ってきた。
結果は「合格」だった。昏い懲罰防で、アンディは安堵の表情を浮かべる。
その頃、所長はトミーをとある場所へ呼び出していた。
事実の確認と、再審の時に証言できるかという問い。トミーは迷わない。恩人であるアンディのため、真実を証言することを誓う。
確認を終えた所長は、
ハドレー主任刑務官に合図すると、トミーを射殺させてしまう。
所長は懲罰防のアンディに、「トミーが脱獄を図ったから射殺した」と伝えた。
証言してくれるトミーが殺され、再審請求もできなくなり、絶望に突き落とされるアンディ。
追加で課された一か月の懲罰防での暮らしを終えたアンディは、心身ともに疲弊していた。
アンディがレッドに語ったのは、亡き妻のことだった。
妻への想いと後悔を吐露するアンディ。それに対し、レッドは「君は引き金を弾いていない」と否定する。
そして、アンディはレッドに夢を語る。
アンディの誘いに、レッドは首を振る。
ブルックスと自分を重ねるレッド。
ここでのアンディの言葉は、後のレッドにとある決断を促すことになる。
「いったい何があるんだ?」
レッドの問いに、アンディは「行けば分かる」とだけ答えて去っていく。
アンディのことについて、レッドは仲間内で話し合っていた。
その中で、気になる情報が出てくる。
特に理由も無いため、気軽に貸したという。仲間内に緊張が走る。
まさかアンディに限って変な気は起こさないだろうと仲間たちが楽観視する中、レッドの考えはシビアだった。
その頃、アンディはかつてのように、所長の裏金を管理していた。
所長は御満悦。
アンディは明日までに磨いておくよう指示された靴を磨き、
独房へ帰宅する。
上からはレッドが、心配そうにアンディを見ていた。
消灯される中、アンディは借りたロープを握りしめる。
レッドにとって、長い夜が始まる。
翌朝、アンディの独房を確認するが、
アンディが出てくる様子は無い。
周りの刑務官も、アンディが独房から出て来ないことに気付き、警告をするが、それでも姿を見せない。
直接独房を確認すると、刑務官は目を丸くした。
その頃、所長は磨くように命じた靴が無くなっていることに気付き、さらに鳴り響く警報で異常事態を知った。
なんとアンディは、独房から忽然と姿を消していた。参考人として、アンディと親しいレッドも呼び出される。
しかし、レッドは何も知らない。それどころか、アンディが借りたロープで首を吊るのではないかと危惧していた程だ。
その時たまたま、所領が投げつけた石が、ラクエル・ウェルチへと代替わりしていたポスターを貫通し、奥の大穴を発見する。
なんとアンディは、ポスターの裏に穴を掘り、脱獄を果たしていた。
脱獄に用いたのは、いつかレッドが調達した小さなロックハンマーだった。
穴を掘ることで、アンディは正気を保っていた。
脱獄する晩、アンディは所長の通帳や明細を、全て別のものとすり替えた。
綺麗に磨いた所長の靴を履いて独房に戻り、
囚人服の下に所長の背広を着込み、
汚れないように、その全てをビニール袋の中に入れてロープで結んだ。
掘り進めた穴を通って独房から脱出し、
雷の音に合わせて石を打ち付け、下水管に大穴を開けた。
翌日、所長が穴の存在に気付いた頃、見たことも無い男が銀行を訪れていた。書類上でしか存在しないはずの男だった。
彼は、かつてアンディが創り上げた架空の黒幕――スティーヴンと名乗った。
彼は12軒近い銀行を回り、37万ドルを優に超える額を持って街を去った。レッドはこれを、「19年間の退職金」と形容した。
サイレンの音が鳴り響く。
隠し金庫にはアンディの聖書が入っており、そこにはアンディからの伝言と、ロックハンマーの型にくり抜かれたページが現れた。アンディはロックハンマーを、聖書の中に隠していたのだった。
全てを察した所長。
ハドリー主任刑務官が逮捕される。
所長はハドリーとは違った。
逮捕されることを望まず、拳銃自殺した。
アンディから届いた絵ハガキで、彼が悠々と南下していることを知り、レッドは表情を綻ばせた。
仲間たちとアンディの話で盛り上がった。
しかし、その一方で
ポッカリ穴が開いたような気持ちを抱いていた。
そしてついに3回目の仮釈放審査。
静かな表情でレッドが入室する。
結果は仮釈放可。
ここのレッドは1、2回目の時とは明確な違いがある。
仮釈放になった後に死を選んだブルックスと、希望を語って脱獄したアンディ。外の世界の認識も二転三転した。今のレッドは、1回目の時の様に媚びへつらう卑しさも無ければ、2回目のように自分を偽ることもない。
仮釈放が決まったレッドは、1回目の時のように塀を見上げる。しかしその表情は晴れやかだ。
ブルックスと同じようにバスで移動し、
かつてブルックスが泊まっていた部屋を使うことになる。
ブルックスと同じ仕事をさせられ、
ブルックスと同じように絶望する。
まるで歴史を繰り返すかのように、レッドもブルックスと同じ最期を辿るかと思われた。
しかし、
レッドはアンディが語った地へ向かう。
「石垣があり、カシの木が一本生えている」
「石垣の根元に見慣れない石がある」
「黒曜石という石だ」
「その石の下にある」
入っていたのはお金と、
そしてアンディからの手紙。
手紙を読み終えたレッドに、迷いは消えていた。
いつかのアンディの言葉を反芻し、「必死に死んだ」ブルックスの言葉の横に文字を掘る。
レッドは町を出る決意をした。
FIN
2. 感想
いやーやべーよこの映画(小並み
とは言え、僕もこの映画の1/10も理解できていないわけですが。
観れば観るほど新しい発見がある。撮り方、魅せ方、各シーンの尺の取り方、そして演技。どれを取ってみても隙が無い傑作です。
ダブル主人公と銘打っている通り、この映画の主役はアンディとレッドの二人です。アンディを「表」の主人公とするなら、「裏」の主人公はレッドでしょう。
二人の違いは、まず「実際に罪を犯したかどうか」です。
アンディは、途中で判明することですが、実は冤罪でした。犯してもいない罪で受刑者となり、劣悪な環境のショーシャンク刑務所へ入所することになります。ボグズから暴行を受け、所長の不正取引に加担し、それでもレッドを始めとする仲間たちと共に、案外悪く無い日々を送っていたように見えます。
そんな彼が絶望したのは、トミーが殺されたときでした。自分に関わったことが原因でトミーは殺され、そして釈放のチャンスも不当に奪われた。この時、アンディは深い絶望の中で、自分の「罪」を知ります。それは亡くした妻に対する想いでした。「こんな私が彼女を死なせた」と語るアンディ。ここで、アンディは自分の「罪」を清算しているのです。
アンディのストーリーは、希望を信じ、運命に抗い、自分の過去を清算した男が悪に鉄槌を下すという、非常に分かり易い構成になっています。
一方で、レッドは実際に引き金を弾いた人間です。アンディと違って冤罪でない彼に「脱獄」は赦されません。彼は長い囚人生活に精神を蝕まれ、廃人になっていきます。
レッドの精神的な変化は、1~3回目の仮釈放審査を振り返ると分かり易いです。
1回目は、何とかして仮釈放になろうと視線は動き回り、表情も上っ面であることが分かります。
2回目はブルックスの死を経験した後のことです。自分もブルックスと同じであることに気付いており、外の世界に対する恐れと諦めが見て取れます。
3回目はアンディの脱獄を経験した後です。親友のいなくなった生活を空虚に感じながら、レッドもまた己の罪と向き合うことになります。ここでのポイントは、レッドはアンディと違って本当の殺人者であるため、「罪を清算する」ことができないということです。犯した罪が消えることは無く、更生したかどうかにも意味は無い。自分の「罪」を一生背負って生きていくしかないんです。
自分の生き方について折り合いをつけたレッドは、無事に仮釈放を果たします。「罪と向き合った後に刑務所を出る」という流れはアンディと同じですが、手順があくまで正規に則っているところが対比になっています。
しかし、レッドの試練はまだ続きます。
ブルックス同様に追い詰められていくレッド。外の世界では生きられないと絶望する中、アンディとの約束を思い出します。手紙を読み、再び希望を得たレッドは、国境を越えてアンディに会いに行くことを決めます。
この映画の主題は、作中でも語られた「必死に生きるか、必死に死ぬか」という言葉に集約されているように感じます。
みなさんも、自分を廃人にする日常から脱獄して、必死に生きてみませんか?
そう言われた気がして、ちょっぴり希望を信じてみたくなる、
そんな、素晴らしい映画です。