ジャンル | SF |
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原作 | Vivy Score |
原案 | 長月達平、梅原英司 |
監督 | エザキシンペイ |
シリーズ構成 | 長月達平、梅原英司 |
脚本 | 長月達平、梅原英司、河口友美 |
キャラクターデザイン | loundraw |
メカニックデザイン | 胡拓磨 |
音楽 | 神前暁 |
製作 | アニプレックス、WIT STUDIO |
放送期間 | 2021年4月3日 - 6月19日 |
話数 | 13話 |
“ニーアランド”、それは夢と希望と科学が混在したAI複合テーマパーク。
史上初の自律人型AIとして生み出され、施設のAIキャストとして活動するヴィヴィは日々、歌うためにステージに立ち続ける。しかし、その人気は今ひとつだった。
――「歌でみんなを幸せにすること」。
自らに与えられたその使命を果たすため、いつか心を込めた歌を歌い、園内にあるメインステージに立つことを目標に歌い続けるヴィヴィ。
ある日、そんなヴィヴィの元に、マツモトと名乗るAIが現れる。
マツモトは自らを100年後の未来からきたAIと話し、その使命は「ヴィヴィと共に歴史を修正し、100年後に起こるAIと人間との戦争を止めること」だと明かす。
果たして、異なる使命を持つ2体のAIの出会いは、どんな未来を描き直すのか。
これは<
私 >が<私 >を滅ぼす物語――
AIの『歌姫』ヴィヴィの、百年の旅が始まる。
(公式サイトより引用)
評価:☆3.2
Amazon Primeで配信されていたので1~13話まで全話視聴しました。
率直な感想として、とても面白かったですね。登場人物のキャラが立っていて、ストーリーも良く、曲も良い。まだ見てない人は是非見るべきです。
ただ、最後の終わり方だけが辻褄が合っておらず、少し勿体ないという印象を受けました。
シリーズ構成・脚本は、「Re:ゼロから始める異世界生活」の原作者である長月達平と、CHAOS;CHILDを担当した梅原英司。
取り扱ったテーマはヒト、AIと心、過去改変。
実力がある人たちが、面白いテーマを取り扱った結果、面白い作品になったという、ある意味順当な結果。やはり面白い作品を作れる人というのは偉大ですね。
それに加え、本作は「歌」というのも重要なテーマになっています。歌姫AIディーヴァ、そして歌姫となったAIヴィヴィが歌う楽曲の数々や、作中で流れる劇中歌はどれも必聴です。
1. 完成度の高い「起」「承」「転」
作品というのは基本的に「起」「承」「転」「結」の4つの要素から成り立っていますが、このVivyにおいてもそれは例外ではありません。この作品は導入である「起」から物語が変調する「転」までの流れが非常に丁寧です。
1.1 「起」
物語が始まると、発声練習しながら歩くボロボロのVivy、軽快な楽曲「Happy Togather」をバックに、崩壊したニーアランド、血まみれの鉄パイプを持ったAIたちが映し出されます。言うまでもなく未来の光景ですね。これは「フラッシュフォワード」とも呼ばれる技法で、本作のラストシーンでもあります。
その後現れるマツモト。そして聞かされる未来のこと。先述した技法によって、これらの存在および出来事に説得力を持たせています。
そして最初のシンギュラリティポイントである相川議員襲撃事件。解決後、マツモトと絆が深まったかと思いきや、飛行機の墜落は阻止させて貰えない。
視聴者に「あ、こういう話ね……」と思わせるには十分な導入でした。
1.2 「承」
洛陽事件、冴木タツヤとグレイスの婚姻、メタルフロート。
シンギュラリティポイントをひとつひとつ是正していくお話。
特に5、6話の完成度は非常に高く、散りばめられた伏線を綺麗に回収しつつ、最後にVivyがバグを起こして「転」に繋がる流れは見事という他ありません。
最初から嫌な予感してたんですよね……ヒトとAIの婚姻なんて、どう考えてもデカいフラグとしか思えません。
僕の一番好きなお話です。
ちなみに僕の友人は、この6話だけで4,000字以上の感想を書いたそうです(笑)
1.3 「転」
Vivyの消失、オフィーリアの自殺、歌姫ディーヴァとの別れ。
7話見たときはVivyがノリノリ過ぎて「誰だこいつ!?」ってなりましたね。まあ、Vivyじゃなくてディーヴァだったわけですが。
そして至上最も可愛い力也ちゃんが見られる話でもあります。
そしてディーヴァとの別れ。このことから、心を込めるという意味が分からないVivyは歌えなくなり、博物館に入れられ、オサム君――後のマツモト博士と出会います。
2. 纏まり切らなかった「結」
さて、僕の中で最も残念だった部分。それがこの「結」です。
なぜなら、シンギュラリティ計画を通してVivyが感じてきたことと、「今の人類は生き残るべき」という最後のVivyの選択が結びつかないからです。
2.1 Fluorite Eye's Songが持つべき意味
本作を語るうえで、決して欠かすことができないのはこの歌です。
これは1話の頃、それこそまだ映像も完成していなかったときから、EDでピアノ曲として流れていた曲です。ずっと伏線だったことに気付いた時はとても感動しました。
そして、歌姫ディーヴァが消え、歌えなくなったVivyが、AIとして初めて作曲した曲でもあります。
オサム「人間はいずれ死ぬ。けれど必ず誰かの中に残るんだ。妻は今でも僕の中にいるんだよ」
この言葉によって、VIvyはようやくこの曲を完成させます。
自分がシンギュラリティ計画のの中で、どんな道を歩んで、どんな出会いをしてきたかを曲に込めたわけです。
この曲を聴いたマツモトも「シンギュラリティ計画ですか?」と聞き返しています。
しかし、一方でこの曲はAIの暴走を後押しする一因になってしまいます。
AIが人間と比べて最も劣っているのは創造性。Vivyがその「創造性」を発揮したことで、AI達は「我々こそ人類足り得る」と判断した。人類を見限り、人類を滅ぼそうとしたAIの、唯一の危惧を払拭してしまったわけです。
つまり、AI達はこの曲を「アクセル」にし、
VivyはAI達を止める「ブレーキ」として用いたことになります。
そのため、この曲――Fluorite Eye's Songは、「人間がどんなに素晴らしいか」を歌ってなくてはいけないはずなんですが……
あれ、人間要らなくない?
AIって至高なのでは?
こんな「シンギュラリティ計画」の思い出を心に込めて歌ったら「AI最高! AI万歳!」ってリクオもびっくりのドリ系になっちゃうよ?
では肝心の歌はどうかと言うと……
めーっちゃいい歌☆
めーっちゃいい曲☆
僕も大好きです、この曲。そして普通に上手い。
これたぶん、上手いのは逆に駄目なんですよ。仮に下手だったら、「やっぱりAIの創造性はゴミだな! 人間必要だわ!」ってなったと思うんです。アーカイヴも心変わりしたと思うんです。
でも上手いじゃん!
いい曲じゃん!
やっぱ人間要らないじゃん!
これじゃ「ブレーキ」にならないんじゃないの? って思いましたね。寧ろAI諸君は歓喜してアクセル踏み込むべきです。名実ともに人類を上回ったわけですから。
2.2 なぜこうなったのか?
原因は単純で、シンギュラリティ計画が「
様々なAI達が、ただひたすら愚直に誠実に、自分の使命に殉じていく生き様をメインに描いてしまったからです。
これが、「
ヴィヴィが他の人間たちと触れて、人間性を成長させ、心を育んでいく話だったら、最後の選択にも説得力があったと思います。
3. 総評
取り敢えず視聴して良いと言えるくらいには間違いなく良作です。
色々と書きましたがアニメはエンターテイメントである以上、面白いかどうかは重要です。そしてこのアニメは面白い。それだけで、他人に奨めるには十分すぎる理由になります。
冒頭で☆3.2と書きましたが、それはあくまで評価の話で、好みとは別です。僕はこのアニメ好きです。
作品の評価というのは、予算、枠組み、時代、整合性、エンターテイメント性等々を考慮すべきだとは思いますが、名作が万人の好みに合うかは別の話ですし、駄作が詰まらないとは限りません。
好きなものを、自由に愛せば良いのではないでしょうか。